愛の向こう          1

























教室から眺めた空は、グレーだった。



朝見たニュースの天気予報では、



夕方ごろから雪が降るといっていた。















「不二、日誌頼んだぞ。」


「はい。」









先生から渡された日誌を自分の席まで持っていき、


手早く済まそうと日誌をひろげる。


よりによって今日、日直になるなんて、


僕も運がないのかな?









天気を記入するところで、


スラスラと動いていた手が止まる。


今のところ、空は曇ってる。


けれど、後に雪が降るだろう。


いつもの日だったら、迷わず「曇り」と


書き入れただろうが、


今日はいつもとは違う。









( )の中に「雪」と書き入れた。


雪が降らなかったら、次の日直さんは変に思うかな?









日誌を書き終え、職員室にいる先生に渡しに行く。


教室から廊下に出ると、


若干、教室より寒かった。


人気のない廊下を歩く。


もう皆、部活にでているかな?









1階にある職員室への階段を降りる。








前方から足音が聞こえたような気がして、


顔を上げると、先生の姿が視界に入った。









「おう、不二。日誌書き終えたのか?」


「はい、先生。」


「早かったな。お疲れ様。」




そういって先生は、僕の渡した日誌を受け取ると


職員室に戻るかと思ったけれど、


そのまま階段をのぼっていった。









靴を履いて、校舎を後にする。


部室までの道の中、空から舞い降りてきたのは




白く、小さな、雪。




それが、僕の手の上に落ちると、


すぅっと消えて、水になった。


激しくはなくて、静かに、とても綺麗に降っている。









まるで、最後に君とキスした時のよう。









部室の扉を開けると、


レギュラーの皆と暖かい風。


外で冷えた身体を温めてくれる。




「あっ不二っ!おっそいぞ〜!」


「ごめん菊丸。日直でね。みんな部室にいるって事は、部活は中止?」


「あぁ。雪が降ってきたのでな。」


「そうだね。手塚。」




さすがにこんな真冬、しかも雪の中での練習は辛い。


ラケットバックを置いてみんなが会話しているところに入れてもらう。


パイプ椅子を持ってきて、大石の隣に座ると、


椅子がキシッと小さく音をたてた。




「あのさ、不二。」


「なに?大石。」


「確か、今日は………」


「大石。覚えてたんだ。」


「忘れるわけないだろう。」




きっと大石もこの雪を見て思い出したのかな?




「えっ!不二先輩。今日ってなんかあるんスか!?」


「桃には言ってなかったっけ。」


「オレも聞いたことないッス。」


「…先輩。オレも知らないです。」




桃と海堂と越前はしらなかったんだ。


話してあげてもいいよね。






「ほかの皆は知ってる?」





僕が尋ねると、3年生の皆は首を縦にふった。










「じゃぁ、どこから話そうか…」
























「それはね、ちょうど去年の今頃・・・」






















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ハイ!ヒロインちゃんはまだですね!
後編がメインですからね!
楽しみにしててくださいね!


05/1/24